医療・介護職の転職、紹介会社経由は本当に得?元採用担当者が採用側の本音を明かします

管理職の悩み

 この記事は、管理職として採用に携わってきた経験から、転職を考えている医療・介護職の方に向けて書いています。

同時に、同じ悩みを抱える管理職の方にも、「応募者にこそ知っておいてほしい」と感じていることを、この記事で代わりに届けられればと思っています。

現場は人が欲しい。でも、コストがかかる。

経営に携わる管理職であれば、日常的に感じているはずです。

現場は常に「人が足りない、欲しい」状況。一方、紹介会社経由での応募から、最終面接まで進むと、今度は「紹介料(コスト)に見合っていない」と経営層から不採用の判断。

これは、医療・介護・福祉の採用における、あるあるではないでしょうか?

厚生労働省のデータによると、2024年度に医療機関が人材紹介業者へ支払った手数料は、医師・看護職だけで年間881億円。看護師・准看護師だけで約598億円にのぼり、10年前と比べ2倍以上に膨らんでいます。経営を圧迫しているのは人件費そのものではなく、採用にかかるコストだという現場の声は、数字が裏付けています。(出典:厚生労働省「職業紹介事業の事業報告の集計結果」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/haken-shoukai/shoukaishukei.html)

人件費だけでなく、“採用コスト”そのものが経営課題になっている。

では実際、採用側の管理職は「応募ルート」をどう見ているのか

今回は、元採用担当者としての経験から、応募ルートごとの特徴と、採用側の本音についてお伝えします。


応募ルートは大きく3つある

求職者の応募ルートは、大きく分けると次の3つです。

① 自己応募

病院・施設の公式サイトや求人票を見て、自分で直接応募するケース。ハローワーク経由もここに含まれます。

② 知人・OB紹介(リファラル採用)

現職スタッフや卒業生からの紹介で応募するケース。

③ 人材紹介会社経由

転職エージェントや紹介会社を介して応募するケース。採用決定時には紹介手数料が発生します。

紹介手数料の相場は、入職者の年収に対して20〜35%が一般的です。看護師であれば、年収の30%前後というケースも珍しくありません。

この3つ、採用担当者の目にはそれぞれ異なって映っています。

採用側から見た、応募ルート別のリアル

「自己応募」――歓迎されやすい

自己応募の最大のメリットは、採用コストがほとんどかからないことです。

しかし、採用側が見ているのはそれだけではありません。

「この職場を自分で調べ、自分で応募してきた」という行動そのものが、志望度の高さとして伝わります。

実際、自己応募者は志望度が高い応募者が多い印象です。

書類や面接が多少不器用でも、「自分で動いて来てくれた人」という前向きな文脈で見られることも少なくありません。

「知人・OB紹介」――”信頼”が強い

内部のスタッフや卒業生からの紹介は、紹介者が一定のフィルターをかけてくれています。「一緒に働けそうか」という最初のハードルを、すでに通過しているわけです。

採用コストもほぼゼロ。(紹介者にインセンティブを設けている場合もある)
採用担当者としては、積極的に受け入れたいルートです。

ただし、管理職と紹介者との関係性にもよりますが、問題が起きたときに対処しにくいという側面もあります。「あの人の紹介だから」といって信用しすぎると、後々リスクになることもある。そこは注意が必要です。

「紹介会社経由」――”能力+コスト込み”で評価される

紹介会社を通じた応募者を面接する際、採用担当者は必ずこのように考えます。

「この人を採用したら、いくら払うことになるか?」

例えば年収400万円の医療職であれば、紹介手数料は80万〜120万円前後になることもあります。

すると採用側は、

「その金額を支払ってでも採りたい人材か?」
「長く勤めてくれそうか?」

という視点で評価することになります。

でも本当に大きいのは、紹介料そのものより、“短期離職”による損失かもしれません。

採用には、紹介料だけでなく、教育コストや現場スタッフの負担、既存チームへの影響も発生します。だから採用側は、「この人は長く働いてくれそうか?」も非常に強く見ています。

つまり、紹介会社経由の応募者は、“能力+採用コスト”込みで見られている側面があるのです。

もちろん、紹介会社経由だから不利というわけではありません。

実際には、

  • 管理職経験者
  • 希少な資格・専門スキル保有者
  • 豊富な現場経験がある人材
  • 後輩育成力が高い人材

など、「紹介料を払ってでも採りたい人材」は存在します。

ただ、同じくらいのスキルと人柄であれば、コストの低い自己応募者が優先されやすい。

紹介会社経由の場合、それなりにハードルが上がる。


これは採用決定のリアルだと思います。

紹介会社は悪なのか?

結論から言えば、そうではありません。

紹介会社には、

  • 非公開求人
  • 条件交渉
  • 面接対策
  • 内部情報
  • 日程調整

など、多くのメリットがあります。

特に忙しい医療職にとって、転職活動をサポートしてもらえる価値は大きい。

実際、採用側も「自力採用が難しい領域」では紹介会社に助けられています。

問題は、“紹介会社依存が当たり前になってきている構造”です。

最近では、新卒ですら紹介会社経由で就職活動をする時代になりました。

本来であれば、「この病院で働きたい」と思って自己応募が集まる状態が、組織としては理想です。

つまり本質的な課題は、紹介会社そのものではなく、「自己応募が集まりにくい背景・構造」にあるのかもしれません。

応募者側が知っておきたいこと

転職を考えているスタッフや後輩に伝えるとしたら?

転職サイトのエージェントは、たしかに便利です。履歴書の添削、面接対策、条件交渉まで手伝ってくれます。しかし、彼らのビジネスは「あなたを紹介会社経由で入職させること」で成立しています。

気になる職場が見つかったとき、まず一度、その施設の公式サイトを確認してください。採用ページに直接応募の窓口があれば、そちらから動く選択肢もあります。

情報収集はエージェント、応募は自己応募

それだけで、採用側の見る目が変わることがあります。

管理職として、採用構造をどう変えるか

大きな問題は、紹介会社依存が「当たり前」になりつつあることです。

ただ、採用側の管理職としてできることはあります。

例えば、

  • 自己応募の窓口を整備する(公式サイトの採用ページを使いやすくする)
  • 職場の魅力をSNSで発信する(専用チームをつくる・外部委託を検討する)
  • リファラル採用の仕組みをつくる(紹介した社員への感謝・インセンティブ)
  • ハローワークを積極活用する(厚労省は2026年度から機能強化を進める方針)
  • 採用コストを「見える化」して経営に提案する

こうした積み重ねは、紹介会社依存を減らすことにつながり、経営への直接的な貢献になります。

でも、本当に強い組織は、「紹介会社を使わなくても、人が集まる状態」ではないかと思います。採用とは、単に欠員を埋める作業ではなく、“組織づくり”そのものなのだと思います。

まとめ

採用ルートは、応募者にとっては「手段」です。

しかし採用側にとっては、

  • コスト
  • 志望度
  • 信頼性

などを判断する、一つの材料でもあります。

自己応募、知人紹介、紹介会社経由。
それぞれに特性があり、採用担当者はその違いを意識しながら選考しています。

管理職には、

「どうすれば自己応募が増えるのか」
「どうすれば人が定着するのか」

という視点が求められているのではないでしょうか。

採用は、“待つもの”ではなく、“設計するもの”

その意識を持てるかどうかが、これからの管理職の差になる気がしています。

最後に、転職を考えている方へ。採用側がどう見ているかを知った上で、応募ルートを選んでみてください。


参考:厚生労働省「職業紹介事業の事業報告の集計結果」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/haken-shoukai/shoukaishukei.html

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